触診を指導に反映する

人間ドックを受けに来た患者さんが、初見の段階で「びまん性甲状腺腫」や「甲状腺結節」などの症状がみられた場合、「バセドウ病」「橋本病」「甲状腺がん」などの疾患を疑い、甲状腺機能の異常に伴う自覚症状、また他覚症状などを確認し、甲状腺超音波検査や遊離チロキシン、甲状腺刺激ホルモンなどを測定し、診断を確定させる必要があると言えるでしょう。頸部のリンパ節腫大がみられた場合には、脇などほかの部位のリンパ節の腫大の確認も必要でしょう。悪性腫瘍が疑われるリンパ節腫大の場合にはほかの検査で異常がない場合でも精密検査が必要になることがあります。胸部聴診で心雑音がみられた場合には心臓超音波検査による精密検査が必要になる場合があり、精密検査を依頼する際には検査を担当する人に雑音の性状や疑わしい疾患を伝えることが重要ではないでしょうか。診察時に不整脈を認めた場合には心電図担当者と連絡をとって、通常よりも長く心電図を記録するなどの配慮が必要になるでしょう。絶対性不整脈を認めた場合には心房細動が強く疑われるので心電図で異常がなくてもホルター心電図などの精密検査が必要になります。そのほかの不整脈については心電図や既往歴を参考にして危険な不整脈でなければ、健康診断での経過を観察する程度でよいけれども、基礎心疾患のある場合や房室ブロックが疑われる場合には同じように精密検査が必要になるでしょう。腹部腫瘤がみられた場合には、腹部超音波検査の担当者に連絡しましょう。とくに通常腹部超音波検査の対象外となる下腹部腫瘤には十分注意しましょう。また拍動性腫瘤のばあいには腹部大動脈瘤が考えられるため、超音波検査を行い、必要に応じて専門医を紹介しましょう。