手術を行った際に切り取った病変のある臓器の事を手術検体と言います。これはホルマリンで防腐処理がなされ、それから病理医が診断に必要な部分だけを取り出し、検査技師が顕微鏡用の標本にするという流れです。患者さんから見れば手術を受けるのであって、検査しているという意識はないでしょう。悪性腫瘍についてはどういう事を調べるのかという決まりがあります。臓器によって細かな違いこそありますが、共通しているのは腫瘍の大きさ・できた位置・大まかな形・きちんとすべて切除されているかと言った基本的な情報をはじめ、腫瘍の種類・浸潤の程度・血管やリンパ管に入っているか・転移していないか・転移の程度は等を報告します。臨床医はこの情報をもとに病気の進行具合を判定し、以後の治療方針を決定します。また、がんと思わずに手術された検体から偶然にもがんが見つかるという事も有ります。従って、種々検体検査による確認というのは常に必要だと言えるでしょう。手術検体検査の一つとして「迅速診断」というものがあります。手術中に顕微鏡の標本を作製してその場で診断するというものです。即座に標本にする為には、検体を凍らせて薄く削るという特殊な方法を取ります。つまり、一度で1~2個の標本しか作れませんし、作製したもののつぶれてしまったら十分な標本とは言えません。となると、診断の間違いも多くなります。しかし、それでも迅速診断によって手術のやり方をその場で決めなければならない瞬間があるのです。手術でがんを切り取った端にがんが及んでいないかを調べます。これは消化器がんの手術において多く行われます。或いはがんに一番近い所のリンパ節に転移が無いかを調べて、なければそれ以上リンパ節を取らなくてもよい事となります。これは乳がんの手術で行われます。このように、本検査は診断の確認・治療方針の決定において欠かせない検査なのです。